土用シリーズⅢ ~秋の土用~
春の土用の頃に、胃の不調のご相談を頂いたことがきっかけで「脾」を整える季節の変わり目「土用」について注目するようになりました。
そこから始まったこの「土用の養生シリーズ」もこの秋の土用で3回目になります。
復習を兼ねてまずはお読みください
春の土用については →https://benibana-kanpou.com/date/2025/04
夏の土用については →https://benibana-kanpou.com/date/2025/07
今年は異常に残暑が長く、朝晩の空気は冷えてきたのに、木々の色づきはまだ浅く、秋の気配を探すような日々です。
そんな中でも暦は着実に冬へと向かっています。
ここで、少しおさらいを。
土用とは、四季の始まり(立春・立夏・立秋・立冬)の前18日間を言います。
今年は立冬が11月7日なので秋の土用の入りは10月20日、明けは11月6日になります。
陰陽五行説では五臓と季節の関わりを説いています。
すなわち「春は肝」、「夏は心」、「秋は肺」、「冬は腎」。
そして「脾」と関わりがあるのが土用です。
季節の変わり目のこの時期は、漢方では次の季節を元気に過ごすために
「脾(消化吸収)」を整える養生期間 とされています。
8月の立秋から11月の立冬までが秋というわけですが、今年は特に残暑が厳しく体の熱を冷ますような飲食物を摂りがちでした。
そうすると脾が弱って、冬の臓器である腎に精を送ることができません。
脾は湿気や冷えに弱く、冷たいもの・甘いもの・生ものの摂りすぎで働きが鈍くなります。
秋の土用は
夏の疲れを癒やし、冬に向けて身体を整える“橋渡し”のような時期です。
特に漢方では脾を整えることで腎にしっかりと精(エネルギー)送る準備ができると考えられています。
秋の土用の時期に脾が弱っていると、冬に冷えやむくみ、免疫力の低下などが現れやすくなります。
だからこそ、秋の土用は「脾をいたわる食事」と「乾燥対策」が養生のポイントになります。
秋の土用の食養生
脾は湿気や冷えに弱いので、秋の土用には、温かくて消化に優しい食事を心がけましょう。
例えば、かぼちゃ、さつまいも、にんじんなどの自然な甘みを持つ根菜類は、脾を補う代表的な食材です。
また、味噌や生姜、ねぎなどの温性食材を組み合わせることで、体を内側から温め、巡りを良くしてくれます。
東北地方の秋の風物詩である芋煮会は、この時期にぴったりの習慣なのです。
また、乾燥が気になる季節でもあるので、肺を潤す食材も意識するとより効果的です。
れんこん、白きくらげ、梨などは、喉や肌の乾燥を和らげてくれます。
白キクラゲと梨のコンポートなどはいかがでしょう?
ただし梨は冷やす性質があるので、生姜も一緒にがお約束。
秋の土用は、冬を元気に迎えるための「準備期間」
夏の疲れがまだ残って「なんとなく疲れやすい」、「冷えやだるさを感じるようになってきた」などからだの不調だけでなく、感情面でも「なんとなく感傷的」になりやすい時期です。
私も晩秋の夕暮れは、なんとなく感傷的になってしまいます。
そんな時こそ、土用の養生を思い出してみてください。
季節の節目は、自然からの“深呼吸してね”というメッセージ♪
どうぞご自身の心と体に、やさしい時間を贈ってあげてください。
自分の体と心に耳を傾けることで、冬の冷えや不調を未然に防ぐことができますよ。
文責
べにばな薬局 薬剤師 国際中医師
渡辺喜美江
私たちがお待ちしております!
お問合せ、ご相談は
べにばな薬局
TEL 0955-70-1881
タグ:佐賀, 唐津, 漢方
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私たちの薬局では、昔ながらの知恵を活かして漢方の軟膏をひとつひとつ手作りしています。
街の薬局で作ることができる漢方の軟膏は二種類あり、そのうちの1つ中黄膏は美しい黄色が、いかにも炎症を鎮めてくれそうな軟膏です。
(前回の中黄膏と華岡青洲についてのお話はコチラ⇒https://benibana-kanpou.com/news/2430.html )
もう一つは中黄膏と同じく古の知恵に学んだ紫雲膏です。
今回はその紫雲膏に焦点を当ててみましょう。
紫雲膏は、その名の通り赤紫色が美しい軟膏。見た目にも癒やされるやさしい処方です。
紫雲膏は江戸時代の名医華岡青洲が創薬した漢方軟膏で、構成生薬の「紫根」と青洲の通称名「雲平」が紫雲膏の名前の由来と言われ、現在でも「一家にひと瓶」の常備薬として頼りになる優秀処方です。
★こんな方に
ひび、あかぎれ、しもやけ、あせも、ただれ、かぶれ
外傷 火傷
痔の痛み、肛門裂傷
魚の目 など、様々な皮膚疾患にお使い頂けます。
★紫雲膏の主な成分
紫根(シコン):ムラサキの根
清熱涼血、解毒作用があり、発疹や傷の治癒に役立ちます。
当帰(トウキ):トウキの根
補血、強壮、鎮痛、鎮静作用があり、婦人病などの漢方薬に配合されています。
当帰の名前の由来には、婦人病を患った妻が夫が家に寄りつかなくなったので、この薬草を煎じて飲み、回復した時に「恋しい夫よ、当(まさ)に家に帰るべし」と言ったという中国の伝説も。
★紫雲膏エピソード
エピソード1:火傷にすぐ対応できた安心感
閉店間際、「油で火傷をした!」とエプロン姿で飛び込んできた女性。
すぐに冷却と紫雲膏の処置をお伝えしたところ、翌朝「水疱もできず、痛みもなくて助かりました。」とわざわざお礼に来て下さいました。べにばな薬局で作った記念すべき第一号の紫雲膏でした。
エピソード2:痛い魚の目にも効果を発揮
「魚の目が痛くて歩けない。」とお悩みの方。
痛いのでゆるゆるの靴を履いて、足骨格のバランスが崩れています。足骨格のバランス調整を指導しながら紫雲膏を患部に貼って頂きました。「魚の目取れました!」と取れた点のような魚の目を見せに来られました。
その3:乾燥肌を優しく保護
潤す作用があるので、乾燥しやすい唇の保護や割れた唇の修復、カサカサ肌のアトピー製皮膚炎やナイトクリームとしてご愛用の方も。
★紫雲膏作りは温度管理が重要!
「ごま油を煮て、そこへミツロウと豚脂を入れて溶かし、次いで当帰を入れて香ばしい香りがしたら、紫根を加え鮮明な赤紫色になったら速やかに火からおろし、布で漉して冷却して軟膏とする」と薬局製剤指針にはあります。
書くと簡単なようですが、実は紫雲膏作りは温度管理が大変なのです。
紫雲膏の鮮やかな赤紫色は、紫根に含まれる天然色素「シコニン」によるものですが、この美しい色は熱にとても敏感。
温度管理を誤ると、せっかくの有効成分が変性してしまい、色も効能も損なわれてしまいます。
抽出中は、油が赤紫色に染まっていく様子を観察します。香ばしい香りがたち、色がしっかり出たらすぐに火から外すのがコツ。温度管理と共に五感を使った見極めも大切です。
★昔の人はどうやって温度管理をしていたのでしょう。
江戸時代の紫雲膏作りでは、現代のような温度計は当然ありません。
「昔の人はどうやって繊細な温度管理をしていたのかなぁ」と、私は温度計とにらめっこしながらいつも考えていました。
恐らく、それは職人の五感と経験によるものだと思います。
- 色の変化で判断
紫根を油に入れたときの色の移り変わり(赤紫→濃紫)を目で見て、抽出の進み具合を判断していた。 - 音や香りで見極め
油が加熱されると香ばしい香りが立ちます。これらを頼りに、火加減や抽出のタイミングを調整していた。 - 肌感覚で温度を測る
油の温度は、指先や竹串を使って「熱さの質感」を確かめることもあったようです。湯加減を手で測るような感覚ですね。 - 火の種類と距離で調整
薪や炭火を使い、火元との距離や火力の強さを調整することで、間接的に温度をコントロールしていた。 - 経験の蓄積
何度も作る中で「この色になったら火を止める」「この香りが出たら抽出完了」といった身体に染み込んだ知識、経験がまさに「職人技」。温度計以上の精度を生んでいたと思われます。
昔の人はきっと、色、音、香り、肌でタイミングを計っていたのでしょう。便利な世の中になって現代人が失ったもの、昔の人の感覚は本当に鋭かったんだと感動します。
私たちは開業以来、手作りにこだわって紫雲膏を作り続けています。
江戸時代の職人技には達していないかも知れませんが、おかげさまで口コミやリピーターも増えて感謝です。
時代を超えてあなたのお肌の悩みに、生薬の力と手仕事のぬくもりのある紫雲膏をお役立て下さい。
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