べにばな薬局のブログ

空咳がつらい・・・ 

2022年10月28日 金曜日

『秋になって空咳が出始めました。

一度咳をし始めると立て続けに出て、夜は特につらいです。

ゾクゾク寒気や熱もないので風邪ではないと思うのだけど。         

以前咳ぜんそくと言われたことがあるので、そうならないようにしたいのです。』

日中は夏のように暑く、夕方日が沈むと急にヒヤッとした空気に変わったある日、こんなご相談がありました。

コンコン!ケンケン!痰がなくて乾いた咳。

痰はあっても少なくて切れにくい咳。

顔が赤くなるほど立て続けに出る咳。

咳が続くと体力も消耗するし、しかも夜間だと睡眠も妨げられるので、本当につらいですね。

こんなお悩みないですか?

□ 鼻やのどの乾燥感 

□ 乾いた咳

□ 痰は少ないが、切れにくい咳

□ なかなか咳が治まらない

□ 疲れると呼吸が浅くなる

□ 皮膚の乾燥

□ 乾燥による痒み

□ 最近便秘がち

実は、秋は咳のお悩みが増える季節なのです。

【空咳とはどんな咳?】

咳は体内に入ってきた異物やウイルス、細菌などを追い出そうとする身体に備わった正常な反応です。

咳には痰が多い湿った咳と、痰がないか有っても少量で切れにくい乾いた咳があります。

空咳とは、後者の痰がない咳のことです。

【空咳の原因は?】

風邪、空気の乾燥、アレルギー、たばこの吸い過ぎ、咳ぜんそく、肺炎等が有りますが、ここでは秋に多い咳のお悩みについて書いてみます。

【秋に空咳が多い訳】

日中の暑さは夏のようでも朝晩の気温が下がっていく秋口は、冷たい飲み物の摂りすぎや夏の疲れで弱った胃腸を立て直す時期です。

季節はいきなり「夏」から「秋」に変わるのではなく、徐々に移っていきます。

それぞれの季節の変わり目を土用と言い、次の季節に備えて胃腸の養生をします。

土用とは立春、立夏、立秋、立冬の前18日間を指します。

旧暦(和暦)は現在使われている暦と若干のずれもあり、現在の季節感にもそぐわないのでピンとこないかも知れませんね。

秋口は日中は夏のように暑い日が続いているので、つい冷たいものを摂るなど胃腸の養生を怠りがちです。

そうすると、空気が冷えて乾燥する本格的な秋になるころに肺の働きが衰えてきます。

【肺の働き】

肺が吸入した「精気(空気)」と食べ物を脾胃で消化吸収したもので作られた「気」のエネルギーを全身に巡らせ、脾胃から送られてきた水分の代謝を調節をし、皮毛(皮膚)に精を送り、喉や鼻の粘膜を丈夫にして外邪(細菌、ウイルス、気候の変化)から身を守る働きがあります。

【秋と肺】

健康な肺は潤いがあるので、燥邪(身体にとって必要以上の乾燥)の影響を受けにくいのですが、肺の機能が衰えていると空気が冷え乾燥してくる秋に燥邪の影響を受け、鼻や喉の乾燥感、空咳が出やすくなります。

また、肺は皮膚・大腸と密接な関係があるので、皮膚の乾燥、乾燥による痒み、腸の潤い不足で便秘などの症状が出やすくなったりもします。

【肺の養生】

肺は乾燥と冷えに弱いので、秋口に冷たいものを取り過ぎないようにします。

秋は香辛料などで肺を温め、潤す作用のある食材を積極的に摂りましょう。

シソ、ニンンク、ショウガ、サンショウ、コショウ、ゴボウ、大根、にんじん百合根、松の実、クルミ、ごま、リンゴ、イチジク、梨、ブドウ・・・自然はその季節の養生に必要なものをちゃんと用意してくれていますね。

一口メモ:「咳に大根ハチミツ」の訳

大根は気を降ろす作用があり、咳を鎮めてくれます。

蜂蜜には潤す作用があるので、乾燥した咳や腸の乾燥による便秘に効果的です。ただ、大根は涼の作用があるので、生姜を少し入れるとよいでしょう。

【鼻呼吸、口呼吸】

①鼻腔の働き

・匂いを感じる

・声の響きをよくする

・空気の加湿・加温

・異物の排泄(くしゃみ、鼻水などで)

・吸った空気をきれいにする

・一酸化窒素(NO)の分泌

 

②鼻呼吸の場合

・鼻毛や絨毛、鼻水で細菌やウイルス、花粉などの異物を濾過

・扁桃リンパ組織が更に異物を防御

・鼻の中で温められ、加湿された空気が肺に入る

・一酸化窒素により殺菌された安全な空気が肺に入る

 ※口呼吸ではこれができません。

③口呼吸の場合

・口腔内が乾燥し、細菌などが繁殖しやすい

・乾いて冷たい異物だらけの空気が直接喉を通り、肺に入る

【肺と密接な関係 ~鼻 皮膚 大腸 の話~】

五行色体表によると、肺と鼻、大腸、皮毛には密接な関係があります。

①肺と鼻:

鼻腔の働きでもわかるように、鼻は肺を守るために存在すると言っても過言ではありません。

鼻粘膜から分泌される鼻水は、1日に1L~1.5Lといわれています。つまり鼻腔の中はかなり高い湿度になっていて、鼻呼吸で入ってきた乾いた空気に適度な湿り気を与えて肺へ送るという役割を担っています。また、鼻毛は優秀なフィルターで空気中のホコリ、花粉、ウイルスなどが体内に入るのを防いでくれます。

※鼻水が多すぎても困った症状に悩まされるのですが、これについては又別の機会に譲ります。

②肺と大腸と皮毛(皮膚と考えてください):

五臓六腑の関係性で、肺と関係がある腑は大腸です。大腸は食べ物が消化吸収された残り滓から水分とミネラルを吸収し、便を作るところです。

肺の働きが衰えて、働きの一つである粛降作用(上から下へおろす)がうまくいかないと、便も出にくくなってきます。便秘はニキビ肌荒れの原因になることは皆様も実感としてあるでしょう。

皮膚の膚の中に胃という字が組み込まれていますね。つまり「皮膚は内臓の鑑」といわれるように、皮膚治療においては胃腸の状態を考慮するべきなのです。


【秋は感傷的?!】

秋の夕暮れは何故かもの悲しいですね。ススキの穂が揺れても、落ち葉が落ちても悲しい・・・(少々オーバーですが)、秋になって肺が衰えてくると「悲」という感情に陥りやすくなります。逆に季節にかかわらず「悲しみ」過ぎると肺を傷つけます。

そんな時は呼吸が浅くなっていますので、深呼吸がおすすめ。口から大きく吐いて、鼻から深ーく吸い込みます。

空気のよい郊外で紅葉を楽しみながら、深呼吸をすると、「悲しい気持ち」も吹き飛びます。気分転換にもなって呼吸器系も鍛えることができて、一石二鳥です。

いかがでしたか?空咳から感傷的な秋のお話まで。

季節に合わせた養生は漢方が得意とするところです。

薬剤師・国際中医師・子宝カウンセラー 

渡辺喜美江

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